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いずも型護衛艦の改修に見る日本の姿勢の変化

はじめに

これは私の学校の文化祭のオンラインページで私が書いた部分を公開したものです。

afes.info

筆者がニュースなどの情報を独自に分析し執筆しているものであって決して論文などと同等の信頼性があるわけではなくあくまで高校生の妄想の産物だと受け取って欲しいです。

いずも型護衛艦について

いずも型護衛艦とは老朽化で退役したしらね型護衛艦の代艦として建造された。1番艦が2010年に予算化され2015年に就役した。護衛艦隊の旗艦として運用される。いずも型護衛艦を特色づけているのは広大な全通式飛行甲板と従来の護衛艦と異なる自己の防御のみに徹した兵装だろう。一見空母に見える全通式飛行甲板はSH-60対潜ヘリコプターを同時に5機離発着させることができる。その他の米軍のV-22オスプレイ陸上自衛隊航空自衛隊のCH-47ヘリコプター、AH-64Dヘリコプターなどの離発着が可能である。格納庫と飛行甲板をつなげるエレベーターは2基あり特にデッキサイド式の後部エレベーターはMV-22オスプレイF-35も搭載可能だ。ただし現在未改修のいずも型護衛艦に搭載されている航空機はSH-60対潜ヘリコプターが3機のみである。いずも型護衛艦は搭載兵装がCIWS(近接防御火器)としての20mmファランクスとSeaRAMを2基ずつ搭載するのみであり、前級のひゅうが型(現役の空母型護衛艦。いずも型と同じく対潜ヘリコプターの運用をメインとする。)や退役したしらね型が持っていた通常の護衛艦と同等の武装を搭載していない。これは守る艦から守られる艦へ、つまり対潜航空機のプラットフォームに徹する運用が想定されているからである。すなわち単艦では運用せず、こんごう型あたご型、あきづき型、あさひ型などの防空能力の高い護衛艦を伴った艦隊として運用することを前提としている。

 

航空機運用能力以外にもいずも型は高い車両輸送能力(人員400名と中型トラックなど50台)と病院の機能(35床の入院設備)と補給能力(3300KLの貸油・真水。汎用護衛艦3隻分)が存在する。これらの能力は後述するPKO派遣の際にも役に立つだろう。いずも型護衛艦1番艦いずも(出典:https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/ddh/izumo/

ひゅうが型護衛艦1番艦ひゅうが(出典:https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/ddh/hyuga/

しらね型護衛艦2番艦くらま(出典:https://www.mod.go.jp/msdf/formal/gallery/ships/dd/shirane/144.html

いずも型の空母化について

いずも型護衛艦は就役当初からSTOVL機の搭載の可能性を疑われてきた。防衛省は検討していないとして否定してきたが2017年から2018年にかけてF-35BとMQ-8C、RQ-21Aを運用できるかのテストが行われた。

2018年には防衛大綱(30大綱)に「さらに、柔軟な運用が可能な短距離離陸・垂直着陸(STOVL) 機を含む戦闘機体系の構築等により、特に、広大な空域を有する一 方で飛行場が少ない我が国太平洋側を始め、空における対処能力を 強化する。その際、戦闘機の離発着が可能な飛行場が限られる中、 自衛隊員の安全を確保しつつ、戦闘機の運用の柔軟性を更に向上さ せるため、必要な場合には現有の艦艇からのSTOVL機の運用を 可能とするよう、必要な措置を講ずる。」

また同時期に発表された中期防衛力整備計画では「この際、隊員の安全確保を図りつつ、戦闘機運 用の柔軟性を更に向上させ、かつ、特に、広大な空域を有する一方 で飛行場が少ない我が国太平洋側を始めとして防空態勢を強化す るため、有事における航空攻撃への対処、警戒監視、訓練、災害対 処等、必要な場合にはSTOVL機の運用が可能となるよう検討の 上、海上自衛隊の多機能のヘリコプター搭載護衛艦(「いずも」型) の改修を行う。同護衛艦は、改修後も、引き続き、多機能の護衛艦 として、我が国の防衛、大規模災害対応等の多様な任務に従事する ものとする。なお、憲法上保持し得ない装備品に関する従来の政府 見解には何らの変更もない。」と明記された。

2020年9月30日に発表された防衛省の概算要求ではいずも型の改修として231億円が計上され、飛行甲板上の耐熱塗装等に加え、F-35Bを安全に運用す るため、艦首形状を四角形に変更することがうたわれている。日本海事新聞によると、いずも型2番艦の「かが」は「いずも」より本格的なF-35Bの運用に向けた改装をするとのことである。また、同概算要求にはF-35Bの取得(2機264億円)も掲げられており、空母化に向けて着々と準備が進められていることが分かる。

いずも型護衛艦の改装は尖閣諸島などでの中国空母への軍事的な対抗を主目的にしたものか?

中国の空母へ純軍事的に対抗するだけならばいずも型護衛艦を空母に改修する金でF-35A/B戦闘機と空中給油機とJSMステルス空対艦ミサイルを購入し、基地に配備したほうが効率が良い。陸上基地は空母に比べて整備や離発着が容易で同じ機数でも何回も出撃ができる。おまけに備蓄弾薬や燃料も桁違いだ。そして空中給油機と組み合わせることで沖縄から尖閣諸島など紛争が起きえる場所に平均すると空母より多くの機体を投入することができる。しかも国内政治的にも空母化よりは影響が少ない。

一見いい事ずくめに見えるこの案よりいずも型を空母化することが決定されたのはただ単にいずも型護衛艦に戦場での強さを求めているのではないからだったと思う。

例えば平時の戦略的コミュニケーションでは、フィリピン、インドネシアスリランカ、インド、シンガポールなど中国になびきそうな国々に対してプレゼンスを発揮して西側に引き止める役割が期待される。これは中国が行っている空母による南シナ海周辺諸国への威圧に対抗する(こちら側の戦力が中国に劣っているわけではないことを示す)ことも含めてである。こういう意味ではいずも型護衛艦の改装は中国空母に対抗したものだとも言える。

中国との有事もしくは緊張が高まったときいずもはどの様に運用されるのか?

有事の際、インド太平洋地域においてシーパワーの低い東南アジア諸国などの補助としてオーストラリア海軍キャンベラ級強襲揚陸艦アメリカ海軍のアメリカ級強襲揚陸艦、ワスプ強襲揚陸艦イギリス海軍のクイーン・エリザベス級航空母艦などF-35BやF-35Cを運用する艦艇と共に、対中国包囲網の一員として行動する可能性があると思われる。その際にはいずも型護衛艦の艦載機が他国の艦船に発着艦したり、または他国のF-35Bを着艦させて給油したり航空管制を行うかもしれない。また、中国軍と比べると相対的に低下した太平洋、アジア圏におけるアメリカの矛(正規空母爆撃機など)の機能の一部を補完するために活動するだろう。根拠としてトランプ大統領のいずも型護衛艦2番艦「かが」艦上でのスピーチを引用する。

As you know, Japan recently announced its intent to purchase 105 brand new, stealth F-35 fighter aircraft. The best in the world. This purchase would give Japan the largest fleet of F-35s of any of our allies. And soon, this very ship will be upgraded to carry that cutting-edge aircraft. With this extraordinary new equipment, the JS Kaga will help our nations defend against a range of complex threats in the region and far beyond.

ご存知のように、日本は最近、105機の真新しいF-35ステルス戦闘機を購入する意向を発表しました。世界一。この購入により、日本は同盟国の中で最大のF-35艦隊となるでしょう。そしてすぐに、このまさにこの艦はその最先端の航空機を運ぶためにアップグレードされるでしょう。この驚異的な新しい機器を使って、日本国海上自衛隊「かが」は私たちの国がこの地域とそれをはるかに超えた範囲の複雑な脅威から身を守る手助けをします。

ホワイトハウスのプレスリリース(https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-aboard-js-kaga/

私たちの国がこの地域とそれをはるかに超えた範囲の複雑な脅威から身を守る手助けをします・・・つまり日本とその周囲の広大な範囲、台湾、東南アジア諸国なども含むと解釈するのが妥当であり、このスピーチは当然トランプ大統領のみが考えた訳ではないだろうから、米政府もしくは国防省の意志なのだろう。

このことは日本としてもメリットが有る。単独で中国に対抗するのは非常に困難であっても東南アジア諸国、オーストラリア、イギリス、アメリカなど同盟国及び准同盟国と協力してることで中国に対抗できるようにして武力による現状変更を抑止できる。いずも型護衛艦を空母として運用することは敵が有力な航空戦力を保有する場合、従来の航空自衛隊基地もしくは米軍の航空機のカバーの下でしか動けなかった海上自衛隊がその外でもある程度の活動できるようになったことでもある。すなわち本土よりも離れたエリアで交戦することが可能になり、離した本土と交戦エリアとの距離は本土の安全にも直結する。

将来的ないずも型護衛艦の運用の予測

将来日本はフランスやベルギーの様にプレゼンスの維持のためPKO自衛隊を派遣して国際貢献をアピールしていく路線に走るかもしれなくその際、派遣部隊の母艦として使用されるかもしれない。いずも型は先述の通り高い輸送能力と補給能力、病院機能が存在するのでPKO派遣の際には重宝されるだろう。そしてもしも派遣部隊が武装勢力に大規模な攻撃を受けた場合、航空支援を行うことによって窮地を救うこともできるだろう。

総論

いずも型護衛艦の改装は純軍事的な意義より遥かに大きい政治的な意義がある。いずも型護衛艦の改修は少子高齢化によって国力と労働人口が減少した将来の日本が国家主権と国際影響力を維持し続けるために変化する自衛隊の姿の変化に一例に過ぎない。30年、いや20年後には私達は今からではまったく想像できない日本の姿を見ることになるだろう。